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     連載コラム 2010. 春 最新号
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札幌電気工事業協同組合 理事長 尾池 一仁
「 無機質化する人間社会 」
 
 「おう!そう来るか、然らばこれならどうだ。」囲碁やオセロゲームでもしているのかと思いきや相手はパソコンである。パソコンと話をする人種がいるとは聞いていたが事実であった。確かに何かに夢中になれば、私だって愛犬に話しかけることはある。でも、それは人間の本質的感情表現であり、有機質的会話である。パソコンは無機質物体であり、感情の伴わない物質と会話をすることは私にはどうしても理解出来ないことである。私が現代社会の二十代、三十代の若者から受ける印象は顔に表情がなく、みんな同一人物に見えてならない。まるでサイボーグを感じさせるものである。

 言葉とは、感情表現、あるいは意志伝達の手段である。人間社会は実に複雑で不確実な世界であるから言語が必要であり、健全な社会生活を営むためには正しい言葉使いが不可欠である。
 現代の若者は会社の飲み会には参加しない、麻雀はしないなど上下関係、あるいは勝負の格差関係に関わらず対等な関係で付き合えるパソコンとの関係を望んでいるのである。そのようなパソコンと対等の関係で結ばれている若者が現実社会と向き合った時に蓄積された阻害感が要因となり、通り魔的凶悪犯罪を誘発し、多くの悲劇が生まれているのである。

 このような無機質の若者を生み出す原因は多種多様の環境が要因であるが確実に立証できることは幼児期における情緒的教育の欠如と若年層が本を読まなくなっております。文章を書かなくなったいわゆる活字離れが要因として挙げられます。そもそも、言語は私達、人間社会における最も重要な感情、あるいは意志伝達アイテムであり、また言語は単語だけでなく主語、述語(動詞、助動詞、形容詞)などで構成され、言葉あるいは文章として成り立つのである。更に尊敬語、謙譲語、丁寧語など伝達相手により使い分けが必要としているのである。

 今、若年層が意志伝達手段として汎用化されているのは携帯メールである。その中味は絵文字が主体であり、文章と言えるものではない。頻繁に笑顔マークが登場するが人間の笑顔には嬉しさの笑顔、照れ隠しの笑い、相手をバカにした笑いなど様々である。これらを理解せずに一元的な表現がまかり通ることは、社会の世代構造が同世代の一元的構造ではなく、乳幼児から高齢者まで多元的であり、友達間での伝達手段が社会の常識などと思われているならば末恐ろしいかぎりである。

 改めて、若年層が苦手とする人間関係のコミュニケーションについて考えてみる。パソコンと対等の付き合いを好みとする若者は必然的に敬語も使えず、上司といえども対等の対応しかできない自己中心的社会人が増加しているのが現状である。悪いことに現代社会そのものが親子関係であるとか、人間としての感情の伝達が不必要な社会現象が加速しているように思える。
 具体的には老人介護が充実し、親の面倒を見なくても良い社会、子供手当があたり、子供の面倒を見なくて良い社会、ネット販売が進み、在宅で全て賄える社会、個人情報保護法により、となり近所の住人の名前すら知らなくてもよい社会、人間同士の交流が閉ざされた社会が目前にあるのです。人間が人との交流をこのように閉ざされ、隔離された社会は感情のないサイボーグ社会であり、無機質的社会となってしまうのです。

 せめて、私ができることは孫娘に本を読み聞かせ、感情豊かな思いやりのある大人に育てることが無機質社会に反抗することであります。しかし、今となってはそのような人間を育てることが無意味になったのかも知れません。近未来においては感情豊かな人間は少数派であり、いじめの対象になるかも知れません。
 

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