「紫煙」をお読み頂いています皆様に、改めまして2006年の新春をご健勝でお迎えに成られましたこと、謹んでお慶び申し上げます。
今年の干支は戌年でありますから年頭にワンと一声吼えて始めさせて頂きます。昨年の組合員の皆様の経営環境は、日本経済の回復とは裏腹に益々厳しくなって来ているのが現状でありました。其の背景には地域経済の低迷、とりわけて北海道経済に対する本州大手企業の支配率が、加速度的に高まっている現状があります。
一例として札幌市内で、事業主が本州大手デベロッパーによる高層マンションの建設ラッシュが続いています。其の事業の建設主体は本州大手ゼネコンであり、更に設備付帯工事の請負者は本州大手サブコンの構図が確立されています。当然地元の組合員企業の参加機会は殆ど無く、仮に其の機会に恵まれたとしても、いつでも契約解除が可能な日当労務者としての参加が現実であります。
このようにして、本州大手企業の独占施工にて完成に至ったマンションを購入するのは、道内資本の企業に勤務し、その報酬資金を元手とする道民であります。その結果、道民が生み出した資金は道内に止どまらず、全てが本州に流出することとなります。このように経済成長の基本である資本の還流が行われない一方通行現象が、本州大手企業による大型店舗の進出などでも見られます。
更に地方自治体の公共工事に於いても、行政改革の御旗の基で自治体の人員削減が進み、パソコンが代行できる事務系職員の削減なら未だしも、技術系職員の大幅な削減が進んでいます。この事によって発生する、技術的責任回避の短絡的手段として、本州大手ゼネコンへの一括発注が進行しているのが現状であります。
地方自治体の公共投資の原資は、住民並びに地場企業の納税資金と補助金で構成されていることからも、本州大手資本への一括発注は、資本の一方通行現象に留まらず、地方自治体の行財政再生計画に逆行するものと思われます。
過去においては自治体の歳入増加を目的に、北海道あるいは各自治体がこぞって、本州企業の道内誘致の営業活動をしていましたが、最近はほとんど耳にしません。聞こえてくるのは歳入が望めないから歳出削減の話ばかりであります。
本州企業の誘致が望めないのであれば、北海道で既に事業を展開している既存の本州企業に対して、支社・支店・営業所を分社化(現地法人化)することを、自治体条例で定めるにはいささか乱暴であるが、自治体が本州企業の道内の営業拠点を現地法人化して頂く営業活動を展開して、それが実現できれば大きな歳入拡大につながるものと思われます。
もう一声ワンと吼えさせていただきます。もの造りには、技術が必要であり信頼できるもの造りには技術者としての責任と、それを守るモラルが付加されます。
其の技術者責任がダンピング受注競争あるいは自治体の技術系職員の削減により崩壊の危機に直面していると思われます。その実例として、昨年末に大きく報道されました一級建築士によるマンションまたはホテルなどの、耐震構造設計に関わる犯罪的捏造計算、更には、それを見抜けなかったあるいは容認した民間審査機関のずさんな審査体制、並びに建築業者の技術的チェック機能の欠如、更にまた事業主の社会的モラルの欠如などによって、エンドユーザーに対して莫大な損害を与えたことは記憶に新しいところであります。
実は恥ずかしいことでありますが、建築確認審査が民間審査機関でも審査可能であることを、今回の耐震構造計算捏造事件が報道されるまで知りませんでした。国民の生命財産を守るのが、国あるいは地方自治体の責務であることは憲法にも明記されているにも関わらず、守るべき監視体制、並びに認証システムが崩壊している現実は、電気工事業界にも其の波紋を投げかけています。
国並びに地方自治体の専門技術者の削減、あるいは国民の財産を守るべき技術的責任を民間に委託することがこのまま進行しますと、組合員企業が公共工事を受注し、自社の技術の粋を集め竣工したにも関わらず、官側にその工事の評価能力が無く、その結果は受注意欲の低下、施工品質の低下を招く恐れが懸念されます。
札電協も本年度の事業目標の主体を、国家資格であります第一種電気工事士・第二種電気工事士・認定電気工事従事者などの新規資格取得者の育成に努めると共に、資格取得講習並びに資格更新時の講習を通じ、技術的向上は基より技術者としてのモラル責任の自覚を教授するところであります。また、年間20万戸の一般電気需要家の電気保安を目的とする一般需要家定期調査業務においても、技術者として妥協を許さない責任ある対応を年頭に置くところであります。
昨年度より札電協の組合員が、お客様設備の施工を担当した場合には、完成時に組合員自らが施工証明書を発行し、技術的担保を保障する制度の促進を図って居る所であります。
今年度は更成る施工証明書の発行促進を図り、お客様から信頼される組織であり組合員であることをアピールしていくところであります。
近年の日本では、日本の伝統工芸技術(巧みの技術)・物理学者を含む科学技術者・専門的技術者などが冷遇され、その結果、伝統技術文化の衰退あるいは先進技術及び技術者の海外流失を招いています。其の実例として、神の手を持つ脳神経外科医の福島孝徳医師はアメリカの大学病院に籍があります。また、青色発光ダイオードーの発明者である中村修二教授はアメリカのカリフォルニア大学に籍を置いています。まさに技術大国が技術流失大国となっています。
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